運送業の許可があれば倉庫業もできる?
「一般貨物自動車運送事業の許可を持っているので、倉庫業もそのまま始められますか?」
「運送会社として荷物を運んでいますが、今後は取引先の商品を預かるサービスも始めたいと考えています」
このような疑問をお持ちの運送会社の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
運送業と倉庫業は、どちらも物流に関係する事業ですが、適用される法律や必要な許認可は異なります。
一般貨物自動車運送事業の許可を取得しているからといって、その許可だけで倉庫業を営めるわけではありません。
今回は、運送業の許可と倉庫業登録の違いや、運送会社が保管サービスを始める際の注意点について解説します。
1.運送業の許可と倉庫業登録は別の制度
一般貨物自動車運送事業と倉庫業は、それぞれ異なる法律に基づいて規制されています。
一般貨物自動車運送事業は、貨物自動車運送事業法に基づく許可事業です。
一方、倉庫業は、倉庫業法に基づく登録事業です。
両者の基本的な違いは、次のとおりです。
| 項目 | 一般貨物自動車運送事業 | 倉庫業 |
|---|---|---|
| 主な業務 | 貨物の運送 | 寄託を受けた物品の倉庫保管 |
| 根拠法令 | 貨物自動車運送事業法 | 倉庫業法 |
| 手続き | 許可 | 登録 |
| 主な確認事項 | 営業所・車庫・車両・運行管理体制など | 倉庫の施設設備・管理体制など |
つまり、運送業の許可は、倉庫業登録の代わりになるものではありません。
2.運送業の許可で認められるのはどこまで?
一般貨物自動車運送事業の許可は、他人の需要に応じて、有償で貨物を自動車により運送する事業を営むためのものです。
運送業務の中では、荷物の積込み、積替え、仕分け、一時的な保管などが行われることもあります。
しかし、これらの業務があるからといって、すべてが倉庫業に該当するわけではありません。
運送の一環として行われる取扱いなのか、それとも独立した保管サービスなのかによって、倉庫業登録の要否を検討する必要があります。
運送業の許可を持っていることだけで判断するのではなく、実際の業務内容を確認することが大切です。
3.運送会社が倉庫業登録を必要とするケース
運送会社が新たに取引先の商品を預かり、倉庫で保管する事業を始める場合には、倉庫業登録が必要になる可能性があります。
例えば、次のようなケースです。
- 取引先から商品を預かり、一定期間保管する
- 荷主の商品を倉庫で保管し、注文に応じて出荷する
- 運送契約とは別に保管サービスを提供する
- 複数の荷主の商品を預かる営業倉庫を開設する
- 新たな物流拠点で保管事業を開始する
ただし、これらの業務を行う場合でも、契約内容や業務の実態、法令上の適用除外の有無などによって判断が異なります。
実際に寄託を受けた物品を倉庫で保管する事業に該当するかどうかを確認する必要があります。
4.運送に伴う一時保管なら登録は不要?
運送会社では、配送の途中で荷物を一時的に保管することがあります。
例えば、積替えや配送時間の調整のために荷物を物流施設に置く場合などです。
このような運送に付随する一時的な保管については、必ずしも倉庫業登録が必要になるとは限りません。
一方、荷主との間で独立した保管サービスを提供し、寄託を受けた物品を倉庫で保管する場合には、倉庫業登録の対象となる可能性があります。
ここで注意したいのは、保管する日数だけで判断できるわけではないという点です。
短期間の保管でも、契約内容や事業の実態によっては倉庫業登録が問題となる場合があります。
反対に、荷物を一定期間置いているからといって、それだけで倉庫業に該当するとは限りません。
運送契約との関係や、荷主との契約内容、保管の目的などを総合的に確認することが重要です。
5.運送会社の車庫や営業所を倉庫として使える?
すでに運送業の許可を受けている会社では、営業所や車庫、荷捌き施設などを保有していることがあります。
そのため、「既存の物流施設を利用して倉庫業を始めたい」と考える事業者もいるでしょう。
しかし、運送業の営業所や車庫として使用している施設が、そのまま倉庫業登録の施設設備基準を満たすとは限りません。
倉庫業登録では、倉庫の種類や保管する物品に応じて、建物の構造、床の強度、防火・防水・防犯設備などについて確認が必要になります。
また、建築基準法や消防法などの関係法令への適合状況についても確認する必要があります。
既存施設の一部分を倉庫業に利用する場合には、営業倉庫として使用する範囲や、他の区画との関係も重要です。
特に、車庫として使用している場所を別の用途に転用する場合には、運送業側の施設要件への影響についても確認する必要があります。
6.倉庫業登録にはどのような準備が必要?
倉庫業登録が必要となる場合には、倉庫として使用する建物や事業の管理体制について準備を進めます。
主な確認事項としては、次のようなものがあります。
- 保管する物品の種類
- 使用する倉庫の所在地・構造・用途
- 建物の図面や建築関係資料
- 倉庫の施設設備基準への適合状況
- 倉庫管理主任者の選任などの管理体制
- 荷主との契約内容や保管サービスの内容
必要となる資料や確認事項は、倉庫の種類や建物の状況などによって異なります。
また、倉庫業登録の申請に先立ち、建物の改修や関係行政機関への確認が必要となる場合もあります。
倉庫を借りる予定がある場合には、賃貸借契約の締結前に登録の見通しを確認しておくことが重要です。
7.運送業と倉庫業を両方営むことはできる?
運送業と倉庫業は、必要な許認可や登録などの条件を満たすことで、同じ会社が両方の事業を営むことができます。
例えば、取引先の商品を倉庫で保管し、注文に応じて自社のトラックで配送する事業形態などが考えられます。
保管と配送を組み合わせることで、荷主に対して一体的な物流サービスを提供することも可能です。
ただし、運送業と倉庫業では、それぞれの制度に基づく要件を満たす必要があります。
運送業の許可があるから倉庫業登録が不要になるわけではなく、倉庫業登録を受けたから運送業の許可が不要になるわけでもありません。
8.保管サービスを始める前に確認したいこと
運送会社が新たに保管サービスを始める場合には、次の点を事前に整理しておきましょう。
- 運送に付随する保管か、独立した保管サービスか
- 荷主との契約内容はどのようになっているか
- 保管する物品の種類や数量
- 倉庫として使用する施設の所在地と使用範囲
- 倉庫業登録が必要となる事業形態か
- 施設設備基準を満たしているか
- 既存の運送業の施設要件に影響がないか
事業内容が明確になっていない段階で倉庫を借りたり、設備工事を進めたりすると、後から追加の対応が必要になることも考えられます。
そのため、サービス開始前に必要な許認可を整理することが大切です。
9.行政書士への相談はいつがよい?
運送業に加えて倉庫業を始めたい場合には、事業計画を検討している段階から行政書士に相談することをおすすめします。
特に、倉庫の賃貸借契約や建物の改修工事を予定している場合には、契約・工事の前に確認しておくことが重要です。
行政書士への相談では、保管サービスの内容、契約形態、倉庫の資料などをもとに、登録の要否や必要な準備事項を整理することが考えられます。
なお、建築基準法への適合性や建物の構造など、専門的な判断が必要な事項については、建築士や関係行政機関への確認が必要となる場合があります。
10.まとめ|運送業の許可だけで倉庫業を営めるわけではない
一般貨物自動車運送事業の許可を取得していても、それだけで倉庫業を営めるわけではありません。
運送業と倉庫業は、それぞれ別の法律に基づく事業です。
運送に付随する一時的な保管と、独立した保管サービスでは、倉庫業登録の要否が異なる場合があります。
また、倉庫業登録が必要となる場合には、倉庫の施設設備基準や管理体制などについても確認する必要があります。
運送業に加えて保管サービスを始める場合には、事業開始前に必要な手続きを確認しておきましょう。
東京・神奈川で倉庫業登録をご検討の運送会社の方は、お気軽にご相談ください。
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